しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

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マノエル・ド・オリヴェイラ『わが幼少時代のポルト』(2001年、アルシネテラン) テアトル銀座にて、オリヴェイラのレイトショーを観る。 新作がかかったらとりあえず観にいくただ二人の監督*1のうちの一人、ということで、本当はまずは新作の『夜顔』を先…

ジョルジュ・バルビエのイラストレーション! 国立近代美術館フィルムセンター小ホールにて「映画を記録する」。お目当ては『日本映画史 第一部/第二部』(大日本映画協会、1941年)で、ひょっとするともしや岡田時彦のスチルなぞ拝めたりして、という淡い…

<本日の英パン発見> 文芸評論家・十返肇の随筆に英パンのことが載っている!と知って、こうしてはいられないッ!とまたしても慌てて図書館に駆け込む。どこだ、どこだ、と眼をらんらんとさせながら頁を繰ると、ありました、その名も「岡田時彦氏のこと」。…

清水宏『金環触』(松竹蒲田,1934年) 好きな女優さんの一人であるところの桑野通子がモダンガール役でお目見えし、しかも森永キャンデーストアでお買い物をするシーンが見られるというので、前々から「観ないとリスト」に入っていた作品をようやく遅ればせ…

・阪妻の『雄呂血』にやっぱり英パンは出ていなかった 『映画の友』(昭和九年・1934年3月号)の「故・岡田時彦追悼」に掲載されている英パンの略歴には、「.....帝キネ解散状態に陥ると同時に退社。其後阪妻プロダクションに一時加入し阪妻不朽の名作「雄呂…

秋の夜長に英パンつれづれ 先月、新文芸座で指折り数えて楽しみにしていた、溝口健二『瀧の白糸』を観て、村越欣弥に扮した岡田時彦(特にクライマックスとも思える公判での訊問シーンのあの澄み切った表情ったら!)があまりにも素晴らしくて素晴らしくて、…

11日までやっている、山形ドキュメンタリー映画際のプログラム「やまがたと映画」*1での佐藤千夜子と瀧田静枝特集を横目で「いいナア」とため息吐きながら、20日の学士会館での澤登翠35周年「活弁in学士会座」*2では斉藤寅次郎のシュールな傑作(しかも主演…

英パンの死 英パンの死については、色々な人が様々なおもいを綴っている。小津安二郎が、谷崎潤一郎が、内田吐夢が、岸松雄が、山本嘉次郎が、斉藤達雄が、牛原虚彦が、そして、件の本の著者、南部僑一郎が。 その他、現物は未確認ながら、書籍では入江たか…

南部僑一郎『愛の国境線 炎の女 岡田嘉子』(ノーベル書房、昭和44年) こーれーはー凄い本。何がってタイトルはまるで岡田嘉子の伝記本なのに、中身はもちろん岡田嘉子のことも書かれてはいるものの、その当時の映画人たちの素顔や人となりについての描写に…

「モダン・ボーイ溝口、日本を再発見」 先週末の溝口健二『瀧の白糸』鑑賞に向けて、毎日その日が来るのを指折り数えながら、ほとんど何をやっても上の空でただただ英パンとの「逢瀬」を(って、もう阿呆ですね、逢瀬って(笑))待ちこがれていたので、無事…

溝口健二『瀧の白糸』(1933年、入江ぷろだくしょん/新興キネマ) 「泉鏡花の『義血侠血』を原作とする、無声期の溝口を代表する新派メロドラマ」(フィルムセンターで行われた特集上映「没後50年溝口健二再発見」紹介文)で、現存していない『日本橋』以来…

岩本憲児・佐伯知紀編著『聞書き キネマの青春』(リブロポート、1988)と岩崎昶『映画が若かったとき 明治・大正・昭和 三代の記憶』(平凡社、1980)を読んでいたらどうにもおもしろくて、昨年フィルムセンターで観た『西鶴一代女』はまあいいとしても、最…

溝口映画を観ることは「義務」とエリセは言う 昨年スクリーンで観た映画で一番の衝撃だった溝口健二『浪華悲歌』(id:el-sur:20061215)『祇園の姉妹』(id:el-sur:20061204)が再びスクリーンにお目見えするというので、朝もはよから新文芸座に駆け込む。タ…

溝口健二『愛怨峡』(新興キネマ、1937年) これは傑作。 わたしの中では「大政」(勿論、あの素晴らしきマキノ雅弘『次郎長三国志』シリーズ!)ということになってる河津清三郎は名優なのでいつもの通り素晴らしくてシビレたけれど、主人公・ふみ役の山路…

何て蒸し暑い一日! すんでのところで出かけるのを止めようかと思ったけれど、あとで後悔するのが目に見えているから、今日もシネマヴェーラで清水宏『簪』『暁の合唱』(1941年)の二本を観る。『簪』は例によって斉藤達雄(ちょっぴり偏屈な学者先生といっ…

今週末もシネマヴェーラで映画鑑賞からスタートする暑い一日、今日は清水宏の『不壊の白珠』(1929年)英語字幕版。なんでもチェコの映像所にて当時の指定に即しての復元版ということで、まるでセピア色の写真に彩色したお土産ものの絵葉書のような画面に、…

清水宏『恋も忘れて』(1937年・松竹大船) 溜池のダンスホール、フロリダでナンバーワン・ダンサーだった「ミッチー桑野」こと桑野通子が主演していて、彼女がダンスホールで踊る姿を観られる映画、しかも、舞台設定は岡田時彦も一時期住んでいた横浜・本牧…

いそいそと早起きしてシネマヴェーラにて清水宏『港の日本娘』(1933年)を観る。 こーれーはー、期待通り、いや、それ以上のかなりのモダン乙女映画! こんな可憐な少女たちが主人公の映画を清水宏が撮っていたなんて、びっくり。 舞台は異国情緒溢れるモダ…

いそいそと早起きしてシネマヴェーラにて清水宏『銀河』(1931年)を観る。 サイレントなのに188分て!な、長ーい。だもんで、途中何度か睡魔に襲われて物語の筋を見失ってしまったところもあったけれど、菊池寛ばりのメロドラマで堪能しました。火の燃え盛…

土曜日、シネマヴェーラのモーニングショーにて清水宏『風の中の子供』(1937年)。 小津安二郎『淑女は何を忘れたか』にて「とんがらかっちゃ駄目よ」コンビの葉山正雄と突貫小僧が出ている!のだけれど、この映画では何と言っても三平役の爆弾小僧が大そう…

今日もフィルムセンターにて川島雄三『洲崎パラダイス 赤信号』(1956年)『銀座二十四帖』(1955年)を観る。『洲崎パラダイス』は噂で大へん混んでいると聞いていたので早めに行って、その前に大好きな利休庵にでも寄ってお蕎麦を食べてからと思い、小雨降…

シネマヴェーラの清水宏特集!いよいよ、14日から。 http://www.cinemavera.com/schedule.html 2003年のフィルムセンターでの清水宏特集の時は、運悪く日々に忙殺されていて全く通えなかったので、これは嬉しい!蒲田時代の『不壊の白珠』『銀河』『港の日本…

<本日の英パン発見> その1: 山本嘉次郎『カツドウヤ紳士録』(大日本雄弁会講談社、1951年)に岡田時彦のことが出てくる。貧乏に喘いでいても、いかに彼が洒落男だったかが手に取るように伝わってくるくだりがおもしろい。自伝の中で「凡そ此のモダアン・…

土曜日、昼、フィルムセンターにて清水宏『有りがたうさん』(1936年)、それから国立近代美術館でアンリ・カルティエ=ブレッソンの写真展を観る。ロビーに飯沢耕太郎が居た。『有りがたうさん』は倫理に貫かれた瑞々しいロードムーヴィ、じんわりと泣ける…

終日休みを取って、午前九時半の開館時間と同時に国会図書館でいそいそと岡田時彦関係資料をひたすら閲覧して過ごす。映画と同様、彼に言及されている本や資料の少なさよ。寂しきことなり。目ぼしい論文をコピーした後、ついこの前、岸松雄『日本映画人伝』…

エルンスト・ルビッチ『花嫁人形』(Ernst Lubitsch "Die Puppe", 1919) 有楽町朝日ホールにて「ドイツ映画祭2007」*1のプログラム、エルンスト・ルビッチ『花嫁人形』(1919)『白黒姉妹』(1920)を観る。『花嫁人形』がもうあまりに素晴らしくて! 物語…

『こほろぎ嬢』(浜野佐知, 2006) 下北沢シネマアートンという、階段を上ってゆくと、こほろぎ嬢の住んでいた「二階の借部屋」のような薄暗い小さな映画館ーそこはまさしく翠の映画を上映するのにうってつけの場所といった雰囲気!ーで『こほろぎ嬢』を観る…

だから、という訳ではないけれど、小説のためにちまちまと書き散らしていた映画覚え書きを思い出したように載せてみます。 「少女の頃の混乱した心を遠慮なく感傷的に表しなさい」(マノエル・デ・オリヴェイラ『アブラハム渓谷』*1) 列車の汽笛が響いて渓…

市川崑 『足にさはった女』(東宝、1952年) それが阿部豊監督による1926年作品(我が愛しの岡田時彦が主演している!)のリメイクだから、ということでフィルムセンターでかかっている「シリーズ・日本の撮影監督2」のチラシにマル印を付けた作品。 流麗な…

小津安二郎『小早川家の秋』(1961年、東宝) 死と死の予感が満ち満ちている映画。 『秋日和』で司葉子を借りたお返しに、東宝で撮った1961年度作品。 この2年前に「ノンちゃん」「コンちゃん」役で知られた小津組の高橋貞二が交通事故で亡くなり、その妻も…