しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

2014-01-01から1年間の記事一覧

札幌のテンポラリースペースというギャラリーで、12月9日から開催される吉増剛造展のタイトルが「水機ヲル日、...」となっているのに気づく。それで、7月末に早稲田で見せていただいた大判の原稿の束のことを「水をくぐって染められた糸で織られた「機織りも…

ジョナス・メカス『幸せな人生からの拾遺集』

UPLINKにて、ジョナス・メカスの『幸せな人生からの拾遺集』(68分/2012年)を観た。サイトに掲載されていた短い紹介文を読んで、これはわたしの映画だ、とすぐさま確信したから。 原題を『Outtakes from the life of a happy man』とするこの作品は、皆が眠…

ジョゼフ・コーネル『フラッシング・メドウズ』

フィルムセンターにて、ジョゼフ・コーネルの短編映画『フラッシング・メドウズ』(8分/16mm/1965年)を観たので、忘れないうちに映像の記憶を書かねば、と思いつつも、こんなにあいだがあいてしまった。記憶が薄らいでしまう前に、走り書きしておいたメモを…

白倉敬彦さん

白倉敬彦さんが亡くなられたとのこと。先月、ブログに「白倉敬彦 逝去」で検索してきた人がいて、おかしいな、と思っていたのだけれど、Wikipediaにも何も書かれていなかったので、きっと誤報だろうと思っていた。ひと月も前に亡くなられていたのだ。笠間書…

『本の雑誌』はいつも近所の図書館か勤務先の図書館で立ち読みするくらいで買ったことはなかったのだけれど、今回の特集が「リトル・マガジンの秋!」というので、はじめて買って読む。最初のほうのページに掲載されている内堀弘さんの「リトルプレス・紀伊…

中村三千夫さんの小さな冊子(つづき)

国立国会図書館にて、中村三千夫さんの追悼文を閲覧してきた。詩人の安東次男による文が心のこもった文章でひどく感動する。とりわけ最後の一文。 先ごろ、中村三千夫が急逝した。中村三千夫といっても、一般にはなじみのない名まえだろうが、東京渋谷の宮益…

中村三千夫さんの小さな冊子

この夏はなぜか『瀧口修造の詩的実験 1927〜1937』(思潮社)に挿み込まれたレモン・イエローの添え書きのことがずっと気に掛かっていた。頭のすみに貼りついて、いつまでもそのレモン・イエローがちらちらと掠める。そこには「ボン書店」「ユリイカの伊達得…

追記:平出隆×加納光於の対話で、詩画集をつくりませんか?と提案したのは加納さんのほうからだったとのこと。平出さんからのアプローチだろうなと思っていたので、すこし驚いた。詩画集『雷滴』は、中心に加納さんによるモノクロームの版画が置かれ、その両…

自分用メモ:平出隆×加納光於「装幀をめぐって」 聞き手を平出さんがつとめ、加納さんが答えるというような図式ではじまった。まず、最初に加納さんがおっしゃったのは、自分は絵描きで専門のブックデザイナーではないのに、どうして装幀を頼んでくるのか?…

9/14,15に開催された、かまくらブックフェスタ(http://d.hatena.ne.jp/kamakura_bf/)に二日間とも参加した。いつもは平出隆さんのトークがある日のみ行くのだけれど、今年は大阪からはるばるやってきた、ぽかん編集室+編集工房ノアの机で売り子の手伝いを…

1983年のジョゼフ・コーネル映画祭

京橋のフィルムセンター図書室には、あらゆる映画資料を収集対象としているだけあって、こんなもの(リーフレット)まで所蔵されているのである。すごい(!)。1983年のその場に立ち会えなかった者として、せめて記録だけでもここに書きとめておきます。 1.…

増村保造『最高殊勲夫人』は、戦前の日活映画『結婚二重奏』へのオマージュである

関東でも梅雨明けが発表された午後、フィルムセンターにて、増村保造『最高殊勲夫人』(大映東京、1959年)を観た。若尾文子が可愛いテンポの良いロマンティックコメディの佳作といった感じで楽しめたけれど、いちばん感動したのは、母親役に戦前の日活スタ…

二ヶ月以上も放っておいてしまった。書かないと何があったか思い出せないけれど、書いていないということは、特にぱっとしたことはなかったということか。今年は読書メモをほとんど書いていないことに気付いて焦る。もう半年終ってしまったというのに。再読…

『ぽかん』04号、届いた!

そろそろ出掛けようかなと思っていたら、玄関で呼び鈴が鳴った。郵便配達夫が「お届けものです」と言って手渡してくれたのは、有元利夫の絵を手作り封筒にして、美しい記念切手をたくさん貼った、真治彩さんからの荷物だった。わーこれこれ待ってました。急…

今日は学校はお休み、窓の外は雨模様。雨の滴りと冷蔵庫の唸る音しか聴こえない室内です。更新がほとんど途絶えており、ここを見てくださっている方も稀かとは思うのですが、海に小石を投げるようにしてこっそり書いてみます。昨年のことになりますが、TOKYO…

蜘蛛の巣

井口奈己『ニシノユキヒコの恋と冒険』はほんとうに素晴らしすぎて、久しぶりに新作映画を観て昂奮する。あまりによかったのでトークイベントにまでいそいそと参加して、井口監督に直接「ほんっとに素晴らしかったです!」と伝えられたのが嬉しかった。おお…

高祖保随筆集『庭柯のうぐひす』

金沢のすてきな書肆・龜鳴屋さんより、春の訪れとともに高祖保随筆集『庭柯のうぐひす』が届く。まずは、いつもながら丁寧で好ましい造本に感激。緑色の函に入れられ、手にしっくりなじむ小ぶりの丸背本は、本文も緑色で印刷されている。見返しには瀟洒な邸…