しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

2008-08-01から1ヶ月間の記事一覧

モダン都市函館つれづれ 函館には一度だけ行ったことがある。 路面電車が行き交い、坂の多い、潮の匂いのする港町。坂を上るとブルーグレーに黄色の配色が鮮やかな旧函館区公会堂をはじめとする素敵な洋館や教会建築が立ち並ぶハイカラでモダンな街。ハリス…

久生十蘭(=阿部正雄)について語るキートン氏 「今でも名前を覚えている人で、函館中学に阿部正夫(ママ)さんという人がいましてね。この人がたいへんなお洒落でした。女性にももてたんでしょうね。遺愛女学校というミッションスクールがありまして、そこ…

海野弘『久生十蘭『魔都』『十字街』解読』(右文書院、2008年)*1 久生十蘭の都市小説『魔都』と『十字街』を読み解きながら「東京とパリの1930年代を旅する」という本。海野弘は都市論を書く時しばしばそうなのだけれども、自らが都市漫歩者となってその時…

お盆休み、少しの遠出は逗子の祖父母に会いに行ったくらいで、フィルムセンターに『喜劇の黄金時代』を、アテネフランセに鈴木英夫を観に行って、国会図書館でいくつか調べものをして、あとの残りは家で海野弘『久生十蘭ー『魔都』『十字街』解読』(右文書…

『春寒』(探偵小説のこと、渡辺温君のこと)(『新青年』昭和五年四月号) .....茶色のチョッキに背広を着て、黒いヴガボンドネクタイを結び、髪を長く伸ばしている姿はいつもに変わらぬ渡辺君であった。元来故人は至って無口の方だけれども、それがただの…

ご無沙汰しております。気が付けばもうお盆の週。前から観たかった村田実『霧笛』(新興キネマ、1934年)を観たことや、岡田時彦が子供の頃にはじめて活動写真『名金』を観たという伊勢佐木町のオデヲン座跡を詣でて「おお!」と感動したこととか、自転車で…