しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

ジョゼフ・コーネル『フラッシング・メドウズ』

フィルムセンターにて、ジョゼフ・コーネルの短編映画『フラッシング・メドウズ』(8分/16mm/1965年)を観たので、忘れないうちに映像の記憶を書かねば、と思いつつも、こんなにあいだがあいてしまった。記憶が薄らいでしまう前に、走り書きしておいたメモを書きとめておきたい。

蒼空に鳥のシルエット、羽搏く鳥たちを追うカメラ、また蒼空。秋の午後の陽光が低く射し込む墓場。光を吸い込んで白っぽく見える墓石、さまざまな色彩の諧調を見せる落葉樹の葉。白い石像のクローズアップ、蒼空と陽光が反射して青みがかっている。蒼空と石像の白の組み合わせは、何となくマグリットの絵画のようでもある。白い雲に、また蒼い空。ある墓石にクローズアップすると、そこに"Mauriac"という名前が刻まれている。噴水池の水面にうつる空、木々。微風がおこす縮緬のようなさざ波。水面にゆれる睡蓮。風に揺れる紅い薔薇、うす桃色の薔薇、薔薇の園。木漏れ日がきらめく。そばかすをつけた大輪の鬼百合のクローズアップ。午後の光にあたたまった鋪道に、子どもたちが墨色の影を伸ばして歩く。セーラー服を着た少女と三歳くらいのよちよち歩きの女の子。小さなカートを引く母親と子ども。きれいなものしか写さないコーネルの美学がそこここに溢れていた。