しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

2010-01-01から1年間の記事一覧

三重旅行記 その1 夏休みに三重へゆく。名古屋で青色の車を借りて桑名から津、松坂、伊勢、鳥羽と伊勢湾の海岸線に沿うようにして南下する。今年はじめてひぐらしの鳴くのを聞いた。夕暮れでもないのに。まだ八月の半ばにもなっていないというのに。カナカナ…

少し前の話になるけれど、図書館で『左川ちか詩集』(昭森社、1936年)を閲覧する機会があった。黒色の装幀だったのがすこし意外で驚く。何となくフランス装の白っぽい本を想像していたのだ。三岸節子の装画がシックで、ぱっと見た感じはシュルレアリスムの…

・彷書月刊の8月号「特集・川崎長太郎のうたごえ」における、平出隆×坪内祐三対談がめっぽう刺戟的。長太郎と荷風における歩行の違いの話など、なるほどと思う。何かの目的のために歩くのではなく、歩くという行為やストロークのリズムそのものが皮膚感覚と…

ちょっとご紹介するのが遅くなりましたが、友人のmitsouこと奥村麻利子さんがわたしをモデルにイラストを描いてくれました。すこし気恥ずかしいけれど、でも嬉しい。さっそく本棚の上に飾りました(マリコさん、どうもありがとう)。題して「彼女は本ばかり…

彼女は本ばかり読んでいる

「現代詩壇の代理人?」城戸朱理に対する「門外漢」高橋源一郎の応答: http://togetter.com/li/34662 これを読んで思ったのは、現代詩壇という場所はたいへん硬直しているんだなあということ。「門外漢」が詩について語ると、過剰とも思えるような反応が返…

昨日は、原宿のブックカフェBibliotheque(ビブリオテック)*1主宰の、『鳥を探しに』刊行記念・平出隆トークショー「散文へのまなざし」を聞きに行く。昨年11月の「西荻ブックマーク」(id:el-sur:20091117)での扉野良人さんとの対話の中で、準備中のこの…

今週末に北参道のBibliotheque(ビブリオテック)*1なるブックカフェ――スペルはフランス語なのに、読み仮名は促音のドイツ語ふうなのが不思議といえば不思議――にて行われる、平出隆『鳥を探しに』刊行記念トークショー「散文へのまなざし」にいそいそと予約…

折口信夫つれづれ 眼前に物凄い高さでそびえ立つ山には容易に近づけない。それは判っているのだけれども、折口の落とした、ただ一滴の茄子紺色のインクが――そう「靄遠渓」が波紋を描くようにしてじわじわと染み入ってゆく心地がしている。正直に言うと、折口…

長谷川りん二郎が戦前にアトリエをかまえ亡くなるまで過ごした場所が住んでいる家の近所だったと知ったのは、大判の画集『夢人館4 長谷川りん二郎』(岩崎美術社、1990年)を手に入れてからなので、もう二、三年前のはずだというのに、その場所をいちど確か…

岡田時彦による渡辺温の追悼文 国会図書館の提供する「雑誌記事索引」の断絶と不備とを埋める、皓星社の「雑誌記事索引集成データベース」(http://www.libro-koseisha.co.jp/top01/main01.html)は本当にすばらしい仕事.....!無料公開だったテスト版の頃か…

折口信夫と尾崎翠のこと その2 「学校の後園に、あかしやの花が咲いて、生徒らの、めりやすのしやつを脱ぐ、爽やかな五月は来た。」(釋迢空「口ぶえ」) 「口ぶえ」という小説を読んで、折口信夫というか釋迢空と尾崎翠はつながるのではないか?と考えはじ…

折口信夫と尾崎翠のこと その1 川崎賢子『尾崎翠 砂丘の彼方へ』(岩波書店、2010年)というスリリングな著作に感化されて、ここのところせっせと折口信夫と尾崎翠のかかわりについて調べている。 と言っても、折口信夫と尾崎翠の「かかわり」なんてものはな…

尾崎翠を神話から解放するこころみ:川崎賢子『尾崎翠 砂丘の彼方へ』(岩波書店、2010年)*1 現代の文芸評論家でもっとも信頼すべき書き手のひとりである、川崎賢子さんの待ちに待った新刊。 つねに神話がつきまとってきた尾崎翠を同時代のエコール(文芸思…

山中富美子のこと 昨年の秋に石神井書林の目録に載っていた『山中富美子詩集抄』(森開社、平成二十一年九月)を手に入れてから、何度かぱらぱらと詩篇をいくつか読んではみたものの、これまでじっくり読むということをしてこなかった。詩集は小説と違ってつ…

高祖保を読むと雪がふる 昨日から今日にかけて、小躍りするよな嬉しいできごとがあったのだけれど、ここにそれを書いてしまうと小鳥が羽根をひろげて逃げて行ってしまうような気がするので、書かないこととした。 * 今日の昼休みは書庫に籠って、佐々木靖章…

玲瓏たる雪の詩人の肖像:外村彰『念ふ鳥 詩人高祖保』(龜鳴屋、2009年) 平出隆『鳥を探しに』を読み終えてからというもの、にわかにその辺に居る鳥のたぐいでもそわそわと気になりだし、時間がある時は、鳥を見つけると歩みを止めるようになった。その辺…

ついに、刊行予告を発見.....!3/27発売予定。 川崎賢子『尾崎翠 砂丘の彼方へ』(岩波書店)*1 http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refBook=978-4-00-022405-5&Sza_id=MM 大へん待ち遠しいです。 *1:ISBN:9784000224055

村松桂さんの写真展「danza margine」が恵文社にて開催中だそうです。お近くの方はぜひ。 村松さんの写真をはじめて拝見したのは、昨年の空中線書局の10周年記念イヴェントにおいてだったのですが、どこか不穏で、静謐なのだけれどシンプルというのではなく…