しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

2008-01-01から1年間の記事一覧

モダン都市・函館周遊 その2 横浜や神戸などもそうだが、ここ函館も坂の多い街だ。港街と呼ばれるような場所は皆そうなのだろうか。そうして、だいたい山の上に外国人の旧居留地があったり、洋館や教会が立ち並んでいたりする。横浜の山の手、神戸の北野、函…

モダン都市・函館周遊 その1 連休を使って函館に行く。海野弘『久生十蘭ー『魔都』『十字街』解読』所収の「モダン都市函館」を読んで、それから川崎賢子『彼等の昭和ー長谷川海太郎・りん二郎・濬・四郎』を再読していたら、むくむくと函館行きへの思いが頭…

映画メモ 岸松雄『私の映画史』(池田書店、1955年) 山中貞雄を発見した映画批評家として有名な岸松雄の自叙伝に後半「愚問愚答」と題されて『キネマ旬報』に連載された監督対談が付け加えられている楽しい本。1906年(明治三十九年)生まれのこの著者の自…

15日、有楽町朝日ホールにて、「フランス映画の秘宝」(http://www.asahi.com/event/fr/)。クロード・シャブロル『肉屋』Claude Chabrol "Le Boucher"(1969)、サッシャ・ギトリ『あなたの目になりたい』Sacha Guitry "Donne-moi tes yeux"(1943)を観る。 描…

連休メモ覚え書き 13日、ずっと行きたかった横浜の元町公園にて大正活映撮影所の碑を拝みにゆく。英パンの「俳優事始め」の地。「岡田時彦」の名前がちゃんと碑に書いてあるのを確認してご満悦の図。(←阿呆ですみません) その後、横浜都市発展記念館にてこ…

土曜日、カナさんと金井美恵子+金井久美子+井口奈己トークショーをジュンク堂に見に行く。 映画監督の井口奈己が聞き手というのもあって、映画に関する話題が多かったように思う。『楽しみと日々』と今回の新刊『昔のミセス』において、成瀬巳喜男について…

モダン都市函館つれづれ 函館には一度だけ行ったことがある。 路面電車が行き交い、坂の多い、潮の匂いのする港町。坂を上るとブルーグレーに黄色の配色が鮮やかな旧函館区公会堂をはじめとする素敵な洋館や教会建築が立ち並ぶハイカラでモダンな街。ハリス…

久生十蘭(=阿部正雄)について語るキートン氏 「今でも名前を覚えている人で、函館中学に阿部正夫(ママ)さんという人がいましてね。この人がたいへんなお洒落でした。女性にももてたんでしょうね。遺愛女学校というミッションスクールがありまして、そこ…

海野弘『久生十蘭『魔都』『十字街』解読』(右文書院、2008年)*1 久生十蘭の都市小説『魔都』と『十字街』を読み解きながら「東京とパリの1930年代を旅する」という本。海野弘は都市論を書く時しばしばそうなのだけれども、自らが都市漫歩者となってその時…

お盆休み、少しの遠出は逗子の祖父母に会いに行ったくらいで、フィルムセンターに『喜劇の黄金時代』を、アテネフランセに鈴木英夫を観に行って、国会図書館でいくつか調べものをして、あとの残りは家で海野弘『久生十蘭ー『魔都』『十字街』解読』(右文書…

『春寒』(探偵小説のこと、渡辺温君のこと)(『新青年』昭和五年四月号) .....茶色のチョッキに背広を着て、黒いヴガボンドネクタイを結び、髪を長く伸ばしている姿はいつもに変わらぬ渡辺君であった。元来故人は至って無口の方だけれども、それがただの…

ご無沙汰しております。気が付けばもうお盆の週。前から観たかった村田実『霧笛』(新興キネマ、1934年)を観たことや、岡田時彦が子供の頃にはじめて活動写真『名金』を観たという伊勢佐木町のオデヲン座跡を詣でて「おお!」と感動したこととか、自転車で…

デトレフ・ジールク(ダグラス・サーク)『思ひ出の曲』(1936年、ウーファ)!! 愛らしすぎて、幸福すぎて、一体全体こんな夢見るように幸せな映画が存在していいのでしょうか?と思ってしまうくらい、素晴らしくすてきな映画。そして、この感じは、そうだ…

映画メモ: 海の日、ぴあフィルムフェスティバルにて、ダグラス・サーク『翼に賭ける命』(1957年)『天が許し給うすべて』(1955年)の二本を観た。 ウィリアム・フォークナー『パイロン』が原作の『翼に賭ける命』は素晴らしかった。imdbのレヴューによる…

神戸モダニズム周遊 気になる神戸モダニズム、という訳で、安水稔和『竹中郁 詩人さんの声』(編集工房ノア、2004年)を読んでいるのだけれど、文中で四番目の詩集『象牙海岸』(昭和七年)に収録されているシネポエム「ラグビイ」を引いていて、副題のとこ…

週末記。日本近代文学館(http://www.bungakukan.or.jp/)に「生きた、書いた 女性文学者の手紙展」を観に行く。駒場東大前の駅からいつも花水木の道をてくてく歩いてゆくのは気持ちがよい、のだけれど、あいにくその日は「曇り」という天気予報が外れて、陽…

衣巻省三『詩集 足風琴』(ボン書店、昭和九年) ボン書店で刊行された本を読んでみたいと思って図書館で借りてきた。英パンが死んだ年の夏に刊行された本。著者の衣巻省三は稲垣足穂の級友だったそう。竹中郁もそうだけれど、気になるなあ、神戸モダニズム…