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しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

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生島遼一『春夏秋冬』所収の「弟の玉子焼」というエッセイは、しみじみよい書きものであるが、そのなかに期せずして中村正常の名前がちらと出てきたので、久しぶりに尾崎翠のこと(id:el-sur:20090625)を思い出した。あの珠玉の文章作品を書いた翠が『詩神』のアンケートで「会ってみたい人」として挙げているのが、すこし意外なことに、新興芸術派のナンセンス・ユーモア作家、中村正常なのである。午後、必要があって、書庫で第一書房時代の『悲劇喜劇』を繰っていたら、終刊号の後記を書いているのは、なんと中村正常なのであった。そして、この号には翠がまさに言及した戯曲「アリストテレスの後裔」(初出か?)が掲載されているではないか。なんというシンクロニシティ...これだから本を読むのは止められない。


さらに今日は、紙縒りで補修されて戻ってきた、細江英公の写真集『土方巽DANCE EXPERIENCEの会』を眺めていたら、田村隆一の「四千の日と夜」とともに、ノヴァーリスの詩を引用した冨士原清一詩篇「成立」が載っていたので、とたんに脈が上がる。作者紹介にはこんな文章があった。

冨士原清一(生年不詳)は、一九ニ七年に発刊された日本におけるシュール・レアリストの雑誌「薔薇・魔術・学説」の発行者であり、アラゴン、エリユアルの最初の紹介者だった。太平洋戦争末期ビルマで戦死したと伝えられる。「現代詩大系」(河出書房版)「現代詩人全集」(創元文庫)のいずれにも彼の作品は収録されていない。荒地(詩と詩論)より抜粋


これは土方巽が選んだのだろうか?それとも、田村隆一の推薦による?冨士原清一については、真治彩さんの『ぽかん』02号に短い文章を載せていただいたことがあります→(id:el-sur:20111125) というか、この写真集は去年 Akio Nagasawa Publishingより二冊組限定1000部で復刻されているんですね!新刊で読める冨士原清一とは、これは嬉しい。