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平山亜佐子『20世紀破天荒セレブーありえないほど楽しい女の人生カタログ』*1(国書刊行会)
友人の、いつもお洒落で「素敵な美人」*2にして「掛け値なしのモダンガール」*3であるところの平山亜佐子さん(id:achaco)の著作をお送りいただいた(どうもありがとう!)ので嬉しく読む。
まず、装丁の眩しいほどのショッキング・ピンクに度肝を抜かれ、まるで20年代の"Gazette du Bon Ton"から飛び出してきたような女性や繊細で美しい銅版画のカットにうっとりし、かと思えば、あまりの濃縮加減に窒息しないように設けられた(?)、著者自作の「ミューズ双六」や「セレブ覆面座談会」なるお楽しみページには少し肩の力が抜けて頬が緩むという、全編どこをとってもachaco色全開でただもうにやにやしてしまう。茶目っ気に満ちた独自の基準(いわゆる偉人と呼ばれるような人たちはこのリストには含まないのだそう)で選ばれた20人もの「破天荒セレブ」のギュッと数頁に凝縮された人生ダイジェストには文字通り精気を吸い取られるような眩暈をおぼえてくらくら。こ、この女ひとたち、濃すぎる.....。
日本編に名前が挙がっている原阿佐緒と宮田(武林)文子はこの本でぜひ取り上げて欲しいなあと勝手に思っていた二人だったので、名前を見つけてこれまたにんまり。でも、何と言ってもトップに名を連ねる二人、リアーヌ・ド・プージィとナタリー・クリフォード・バーネイの人生が面白すぎる、いやはや....!スケールが大きすぎる、と言えばいいのか。とりわけ、リアーヌの、浮気相手アルベールの家の窓の下で阿片チンキをあおって自殺未遂を計り、「今度アルベールが自分の妻と子供を「怪物と怪物の子供たち」と呼ばない限りこのまま死ぬと脅した」というエピソードと、ナタリーの「ロマン主義者たちが偉大な言葉をすべて独占したので、われわれにはつまらないものしか残っていない」という警句と、彼女がリルケについて語ったという言葉「彼はいつも病気をしていた。自分の身体もコントロールできないとは、無礼にも近いとわたしには思われた。」には思わず吹き出してしまう。それと、森有正や矢内原伊作とも交流があったという変幻自在のボヘミアン、ディアーヌ・ドゥリアーズのことを知ることができたのは良かった。
色んな「規格外」の女たちが登場するけれど、こういうのを読んでいると自分の些細な悩みごとやイライラなんてどうでも良くなるから不思議。そんなものは彼女たちに言わせればきっと芥子粒ほどにも満たない「蹴散らすべきもの」に違いない。それぞれの「破天荒セレブ」たちから、ややお節介にも似た(笑)強引な励ましの言葉をかけられているかのようで、人生を目一杯駆け抜けた彼女たちの迸る熱気と魂の在り方に勇気をもらえる、そんな一冊。
私信:achacoさま、2007年度のゴンクール賞を取ったGilles Leroy "Alabama Song"はゼルダとスコットの生涯を追った小説(!)だそうなので取り急ぎお知らせします。今のところガリマールから出ている英訳しかないようだけれどね。