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しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

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扉野良人さんより『sumus』第13号をお贈りいただいた。

風のたよりでは、今号の晶文社特集は大へんに話題になっているということ、ありがたきことなり。


扉野さんのエッセイは京都の名曲喫茶クンパルシータと中川六平さんにまつわるもの。


クンパルシータ、懐かしい響きだ。

もう随分と昔、鳥さんが好きな喫茶店に挙げていたのをうっすらと覚えている。 おばあさんがひとりで切り盛りしていて、タンゴがかかっているお店でね。うっすら、というのは、結局わたしはクンパルシータに行くことがなかったからだ。


初夏の光線が刺すように降り注ぐので、アスファルトの照り返しが視界を一面真っ白にしてしまうような日だった。白いシャツにきゃしゃな銀ぶちの眼鏡、首から小ぶりのアンティーク・カメラをぶら下げて、鳥さんは道の向こう側からやってきた。それからいったいどうしたのだろう。今となっては、ほとんどかすかな記憶の断片を思い出せるだけなのだが、たぶん小一時間どこか(ソワレじゃないことは確かだけれど、イノダ?フランソワ?築地?みゅーず?六曜社?)の喫茶店でお茶でも飲んで、時間が来たので、鳥さんとは「じゃあ、また」と別れたのだったと思う。クンパルシータの響きは不思議と耳に残っていたのに、その後の京都行きでもわたしは行く機会がなく、そのままいつのまにか忘れてしまっていたのを、 扉野さんのエッセイを読んで記憶のとびらが少し開いたような気がした。


鳥さんは今、東京のSという繁華街にあるのにへんに静かな場所で、小さなギャラリーを併設した白くてセンスの良い古書肆を営んでいる。

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みなさんの好きな晶文社本のアンケートが興味深いのだけれど、藤本和子訳のブローティガン本を何人挙げている人がいるのかなあ、と思ってページを繰っていたら、 なんとブローティガンの書名を挙げていたのは、『日用帳』の藤田加奈子さんだけであった....! いやはや。ただの贔屓目かもしれないけれど、晶文社といえば、JJ氏と並んで、まずは藤本和子訳の一連のブローティガン本でしょう、 と思い込んでいる元ブローティガン・ファンサイト主宰者としては、この結果は少し意外な気がしたのであった。藤本和子がいなかったアメリカの読者は気の毒だと思う、とまでおっしゃっていたのは、岸本佐知子さんだったかな。

ベンジャミン・フランクリンの自伝を読んで、アメリカについて学んだのはカフカだったかな.......

「アメリカ人は健康で楽観的だ。だからわたしはかれらが好きだ」といったカフカ

リチャード・ブローティガン藤本和子訳『アメリカの鱒釣り』(晶文社、1975年)