しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや



久生十蘭(=阿部正雄)について語るキートン


「今でも名前を覚えている人で、函館中学に阿部正夫(ママ)さんという人がいましてね。この人がたいへんなお洒落でした。女性にももてたんでしょうね。遺愛女学校というミッションスクールがありまして、そこの門の前に立っているのを、僕はよく見たんですが、なんで函中の人があそこにいるんだろうと、不思議に思ったものです。その人は、当時の中学生の服装をしているのですが、マントがとても短い。当時、短いマントを着ている人なんていませんでしたけど、それがなんともカッコいいんです。顔も二枚目でしたし、紺サージの洋服なんか着ちゃって、スカッとしているんですね。だから、中学生だったけど、有名でしたよ。」(益田喜頓『ハイカラ紳士』)