しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

『ぽかん』02号が来た!

貸本喫茶ちょうちょぼっこのメンバーの一人、真治彩さんの個人誌『ぽかん』02号*1が届く。美しい記念切手がたくさん貼られたうす茶の包みを郵便受けに見つけておおいに喜ぶ。これこれ、待ってたわーという感じ。山田稔さんが名付け親(!)というこの小さな雑誌は、創刊号が出た時から気になっていそいそとタコシェまで買いに走った(そして読みものとしての充実ぶりにそのへんのリトルプレスとはひと味もふた味も違うなあと感嘆した)のだけれど、ひょんなご縁があって今号にはわたしも寄稿させていただくことになった。しかも「日用帳」の藤田加奈子さん、りいぶる・とふんの扉野良人さん、モズブックスの松村明徳さんなど前々から(勝手に)親しく思っていた方々と一緒に載せていただくという。やれ嬉しや。彩さん、こんな素敵な機会を与えてくださってありがとうございます。


今号の特集は、小野十三郎の引用からはじまる「私の大阪地図」。寺島珠雄の著書『私の大阪地図』(たいまつ社、1977年)から採られている。うーん渋い。おそらく若い女性にはあまりなじみのなさそうな寺島珠雄さんを、鈴木高徳さんによる色も鮮やかな表紙画のこんなに可愛らしい器に入れて採り上げるだなんて、そのこと自体が画期的だし素敵なこころみだと思う。器ってほんとに大事。寺島さんや大阪についてまったくなじみのない若者たちによる読書感想文もとても新鮮。さまざまな書き手による「私の大阪地図」にはどれも感興をそそられたし、わたしのまだ知らぬ大阪におもいを馳せることとなった。おかやまたべにさんの詩もいいなあと思いながら、そういえば大阪弁(関西弁?)を喋りたいのだった!というかねてからの願いを唐突に思い出したりもした。そうだ、これをたずさえて大阪の街を歩いてみたい。今度大阪に行くことがあったら『ぽかん』02号を鞄にしのばせて旅に出ようと思う。


連載の方も、外村彰さんの「多喜さん漫筆」、中尾務さんの「こないだのこと」、郷田貴子さんの「さよなら女友達」など今回も愉しみに読む。外村彰さんと言えば、亀鳴屋から来年刊行予定の『多喜さん詩集』『庭柯のうぐひす 高祖保随筆集』も待ち遠しい。


読書と本とその周辺をめぐる雑誌ではあるものの、お堅い研究誌や創作のぎっしり詰まった同人誌ではなく、あくまでも日常のなかにそれらを置いてみるというありようがユニークだし、良い意味でゆるゆるとしているから、お茶でも淹れて肩肘を張らずに読める。そしてどこから読んでも愉しい。この絶妙な匙加減は貴重だと思う。88頁とページ数も大幅増でますます読みごたえのある『ぽかん』をどなたさまもどうぞご贔屓に。

*1:こちらで今号の目次を見ることができます→ http://www006.upp.so-net.ne.jp/pokan/backnumber.html