しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

2010年の3(観た順、読んだ順)


[小説・評論]:
平出隆『鳥を探しに』(双葉社)(id:el-sur:20100125)*1
川崎賢子尾崎翠 砂丘の彼方へ』(岩波書店)(id:el-sur:20100408)*2
・ローベルト・ヴァルザー『タンナー兄弟姉妹』(鳥影社)(id:el-sur:20101202)*3


[詩とその周辺]:
・外村彰『念ふ鳥 詩人高祖保』(亀鳴屋)(id:el-sur:20100301)
・via wwalnuts叢書01『雷滴 その拾遺』(via wwalnuts社)(id:el-sur:20101008)*4
・『左川ちか全詩集』新版(森開社)(id:el-sur:20101213)


[展覧会]:
【平明・静謐・孤高―長谷川りん二郎展】(平塚市美術館)(id:el-sur:20100601)
【橋本平八と北園克衛展―異色の芸術家兄弟】(三重県立美術館、世田谷美術館)(id:el-sur:20100812)(id:el-sur:20100825)(id:el-sur:20101109)(id:el-sur:20101201)(id:el-sur:20101212)
岡上淑子「夜間訪問」展】(Librairie 6/シス書店)
次点:
【躍動する魂のきらめき―日本の表現主義】(栃木県立美術館、兵庫県立美術館ほか)
【夢みる家具 森谷延雄の世界展】(INAXギャラリー


平出隆『鳥を探しに』は待ちに待った一冊だったので思い入れもあり、文句なしに今年のいちばん。大切に読む。同著者のvia wwalnuts叢書の刊行開始もプライヴェート・プレスの新しいかたちとして果敢な試み。年初に鳥の本を読んだため、上半期の読書は鳥に取り憑かれていた。雪の降る寒い頃に「雪の詩人」高祖保の評伝『念ふ鳥 詩人高祖保』を読めたことは印象深く、その後ずいぶんと長い余韻に浸った。お待ちかねといえば、川崎賢子尾崎翠 砂丘の彼方へ』もそんな一冊。この本から尾崎翠論の新世紀がはじまる。年も押し迫った頃に出逢った、ローベルト・ヴァルザーの小説『タンナー兄弟姉妹』にはひどく感動させられた。下半期は、美術のことをより多く考えていたように思う。映画の時間は美術の鑑賞にとってかわられた。とりわけ【橋本平八と北園克衛展】(三重県立美術館、世田谷美術館)は素晴らしくて、橋本平八とその作品を知ったことは2010年の大きな収穫だった。この異色の前衛芸術家兄弟の1920年代については、来年もこつこつ調べて行きたいなと思う。それと、恥ずかしながら、今年はじめて(!)驚嘆すべき天才・折口信夫の世界に触れられたことも大きな出来事であった。もっとも全集の手紙や日記といった周縁的な部分しか読んでないのだけれども。


.....と、なんだか相も変わらず、つらつらと心の赴くままに書いているのですが、読んでくださっているみなさまへ。この一年も"長くてしつこい"独り言にお付き合いいただきありがとうございました。どうぞ良いお年をお迎えください。