しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

2009→2010


あけましてお目出度うございます。
2009年はいくつかの忘れがたい出逢いがありしみじみよい年となりました。
前半は尾崎翠にかかり切りでこれ以外はほとんど何もできなかったけれど、後半は詩とその周辺に身を置いて忙しくも幸福な時間を過ごすことができたし、ここ二、三年は映画の方が断然おもしろくなり文学からはすっかり遠ざかっていたのに、またこちらの方へぐっと戻ってきた一年となりました。これもみんな翠のおかげでしょうか。


年も押し迫った頃には、ここでは書けない(ふふ.....!)大へんに嬉しい出来事に小躍りしたりと、なんだか地に足が着いているようないないようなで、そのまま平出隆『多方通行路』(2004年、書肆山田)とかえる目『惑星』とともに年を越し、お正月は横須賀線で読むのがぴったりな、長谷川郁夫『藝文往来』(2007年、平凡社)をおともにして逗子に住む祖父母を訪ね、ゆっくり二人とお喋りして帰ってきました。祖母は素人ながら砂子屋書房で歌集を三冊出していて、目がよく見えなくなった今も歌をノートに書き綴っています。西条八十に二年間弟子入りしていた時『蝋人形』誌に一度だけかの女の歌が掲載された(「二年間も居たのに、一度しか載せてくれなかったのよ」と不服そうな祖母)と言っていたけれど、どの号なのか知ら。駒場で丹念に調べてゆけば見つかるだろうか。伊達得夫とほとんど歳のかわらない大正7年生まれの祖父も、伊達と同じく北支派遣で内蒙古に従軍していたとのこと。広い満州の地で伊達得夫と祖父がもしかしてすれ違ったかもしれないなあ、などと夢想してみる。


2010年もよき一年となりますように。