しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや


僕のあやまち


神保町シアターにて、山田五十鈴特集の中の一本、マキノ正博『待って居た男』(東宝、1942年)を二年振りに観る。今年は一月からマキノ漬けの日々を過ごし、年末になってもまだマキノを観ている。まさに2008年はわたしにとっても幸福なマキノ・イヤーであった。その後、いつものように新刊をチェックすべく東京堂書店に立ち寄ったのだけれど、立ち読みしていて、ある著名な批評家の本の中で物凄い間違いを発見してしまう。というか、正確には家人が見つけて「ちょっと、ちょっと、これ」と教えてくれたのですが。


えー、その批評家とは、前々から個人的にかなり虫が好かない福田和也(わたしは断然、金井美恵子先生のファンだから)で、面出しになっていたこの『東京の流儀』という本、ライカ?ぶら下げて微笑む著者の写真が帯に付いた「優雅な」東京散歩のエッセイらしく、たまたま開いたページで見つけたもので、そこしか読んでないので前後の文脈は一切判らないんだけど、小津安二郎の映画の中で、ラーメン屋を経営している「小沢栄太郎」の娘が杉村春子で、その店に加東大介が「タンメン」を食べに来る云々とか書いている。えー、『秋刀魚の味』でラーメン屋を経営しているのは「東野英治郎」で加東大介がその店に食べに来るのは「チャーシューメン」なのですけれど!


TVにもよくご出演なさっていて著書もたくさんお書きになっている教養豊かな福田和也せんせいともあろうお方が、こんなに大きな間違い(「東京」の「流儀」とか言うなら、ここは間違えちゃマズいでしょう)をしでかしていて(小津映画をまともに観ていないことがすぐ判る、特段好きじゃないのなら知ったかぶって言及しなきゃいいのに!)それを編集者のチェックもすり抜けて、まんまと間違ったまま本になってしまったという誠に不幸な書物がこの『東京の流儀』なのであーる!という、ただの嫌味を言ってみたくなった、ええ、わたしは嫌いな人には相当に意地の悪い人間なのですよ。