しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや


今週末に北参道のBibliotheque(ビブリオテック*1なるブックカフェ――スペルはフランス語なのに、読み仮名は促音のドイツ語ふうなのが不思議といえば不思議――にて行われる、平出隆『鳥を探しに』刊行記念トークショー「散文へのまなざし」にいそいそと予約をしたので、折りにふれて読みかえしているあの美しい本の、格別に好きな箇所をひろって再読しているのだけれども、ひとつ、今まで見落としていた嬉しい発見をしたので忘れないように書き留めておく。


本の奥付を眺めていたら、コピーライトのところにある文字が"T.Hiraide"となっている。著者の単行本のコピーライトではほとんど"Hiraide Takashi"か"Takashi Hiraide"という表記になっている*2のに、この本『鳥を探しに』では"T.Hiraide"となっている。そうなのだ、イニシャルの”T"とすることで、この本の著者はふたりいることを示している。すなわち、平出隆と平出種作。「秘められた文字と韻律」(p.461)を浮かび上がらせるかのようにして、ふたりの声が波動のように交互に響き合いながら織り成されてゆく書物なのだから、確かにこの本はふたりの共著に違いないのだ。こんな微細なところにも行き届いた配慮がなされているのを、さすがにさすがだなあ、と深く感心する。

*1:http://www.superedition.co.jp/biblio/news/#biblio04

*2:例外は、小沢書店刊の『攻撃の切尖』(1985年)と『光の疑い』(1992年)で、これらの本の表記は『鳥を探しに』と同じく、"T.Hiraide"なのですが。