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しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

増村保造『最高殊勲夫人』は、戦前の日活映画『結婚二重奏』へのオマージュである

memo cinema

関東でも梅雨明けが発表された午後、フィルムセンターにて、増村保造『最高殊勲夫人』(大映東京、1959年)を観た。若尾文子が可愛いテンポの良いロマンティックコメディの佳作といった感じで楽しめたけれど、いちばん感動したのは、母親役に戦前の日活スターだった滝花久子が出演していたことだ。日本映画を観る時には、つねにエーパンこと岡田時彦が基準になってしまっている(ちとどうかと思うが...)わたしのなかでは、滝花久子は田坂具隆『結婚二重奏』(日活大将軍、1928年)で共演した女優さんである。ハッピーエンドになだれ込む終盤で、父親役の宮口精二若尾文子川口浩の結婚を受けた台詞に「三重奏と言われるのはご免だうんぬん」(うろ覚えだがそんなニュアンス)というのがあり、これはもしかして!とひらめいたのだった。この映画は三姉妹の結婚を描いた増村版『結婚三重奏』であり、田坂具隆『結婚二重奏』とこの作品に主演している滝花久子への30年後のオマージュなのである、と言ってみたい。この増村作品からは市川崑と同じく、阿部豊、田坂具隆内田吐夢など戦前日活のモダン劇の系譜が感じられて、なんだかじーんとしてしまう。