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しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

欧州旅行記 その1

9月24日夕刻、アムステルダムに到着。スキポール空港(「船の地獄」という意味をもつのだそう)から中央駅へ黄色い電車に乗る。二等車のドアを開けると、がらんとした車両のコンパートメントの壁に大きく落書きがしてあるのを見て、ああ、異国に来たのだ、と少し怖いような気がしてしまう。車窓からは灰緑色のポプラ並木が見える。うす曇りのあわいから射してくるにぶい光、オランダの光。そう、ひとつはオランダの光を見にきたのだった、ということを思う。もうほとんど憶えていないけれど『オランダの光』というドキュメンタリー映画を観たことがあったっけ。


橙色の光でライトアップされた中央駅に着くと、土曜日の夜だからだろう、たくさんの大きな人々がひしめくようにして通路を行き交っている。運河がさっそく見える。それに"Canal Cruises"と赤字のボールドで書かれた看板のもとに遊覧船も。狭い往来では土曜の夜を満喫する人々がビールのジョッキを片手にがやがやと騒ぎ立てているのに、運河の水面にいる白鳥や水鳥の群れはそんなことまるでおかまいなしにすーいすーいとかしこまった顔で泳いでいる。そのコントラスト。これまた土曜日の夜だからなのか、電動モーターのついた自家用の小型船に恋人や友人たちを乗せて水上パーティを開いている人々あり。どの人も陸上に居るこちらに向かって「どうだ、うらやましいだろう?」と言わんばかりの顔つきをしているようで可笑しい。白い泡を勢いよく吐き出しながら電動モーターの騒がしい音がばりばりと狭い運河に響きわたると、そのあいだ賢い水鳥たちはみな脇へ避けて喧噪が過ぎるのを大人しく待っているように見受けられる。そして、騒ぎが過ぎるとまた何処からともなくこの小さな運河に戻ってくるのだ。