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しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

マックス・ブロート宛 [プラナー、消印 1922.7.5]

.......なんと脆弱な地盤、というよりまるで存在もしない地盤のうえに僕は生きていることか。足の下は暗闇だ。そして暗い力がそこから、みずからの意志で生まれ出て、僕が口ごもる言葉なぞ歯牙にもかけず僕の生活を破壊するのだ。書くことが僕を支えている。しかし、書くことがこうした類の生活を支えている、と言ったほうがより正しくないだろうか?むろんそれは、僕の生活は、書かなければもっとよくなる、という意味ではない。むしろそうなれば、ずっとひどく、まるで耐えがたいものになって、狂気に終らざるをえない。しかしそれももちろん、じつはこれが現状なのだが、僕が書かない場合でも作家である、という条件においてだけの話であって、書かない作家というのは、いずれにせよ求めて狂気に陥る化物なのだ。しかし、そもそも作家であるということはどういうことなのか?書くということは、甘美なすばらしい報酬だ、しかし、なにに対する?

『決定版カフカ全集 9 手紙1902−1924』(吉田仙太郎訳、新潮社、1981年)より