しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや


素敵な催しのご案内をいただきました:


アトリエ空中線十周年記念展 インディペンデント・プレスの展開
Development of an Independent Press : the first decade of Atelier Kuchusen
2009年11月13日(金)〜12月6日(日)
於・ポスターハリスギャラリー http://posterharis.com/gallery.top.html    
13:00〜19:00(最終日は17:00まで)
※会期中無休


未生響という詩人の書いた詩集『ファザーランド・ジャンボリー』を手に取ったのは、今からちょうど9年前の2000年のことでした。今は無き池袋リブロの「ぽえむ・ぱろうる」にひっそり置いてあったその小さな冊子の表紙には「空中線書局 刊」という文字が印字されていました。空中線書局?なんだかヘンで素敵な名前だなあ、と思って、ぱらぱらと中を見ると、おお!何という研ぎすまされた言語感覚なのだろう!と感激して、もちろん購入。わたしの持っている冊子には058と番号が振られています。以後「未生響」という詩人の名前と「空中線書局」というプライヴェート・プレスの名前はわたしの心に深く刻まれたのでした。それからほどなくして、「未生響」という詩人と「空中線書局」を主宰する「間奈美子」は同一人物だということを知り、また同じ頃にこれまた偶然にNadiffで見つけた美しいカードに惹かれて、銅版画家山下陽子さんの国立で開かれた個展「詩人の訪問」にもはじめて伺った気がします。


2000年の過去日記より転載:

どうして林檎と蟹の関係は空電によって休符を打たれたのか?


空中線書局から刊行されている未生響さんの詩集・記述発生式空中現象" an etude FATHERLAND JAMBOREE "。はじめにバシュラールのことば(「存在は、爆発しながら放散するところの集中であり、同時に、中心に逆流するところの放散でもある。」)を引いているのを確認してからそこにお行儀よろしく鎮座ましましている絶妙なセンスで選ばれた文字たちの幸運な出会いを眺めているとこれは何と言うか遥か遠い宇宙では今この瞬間も無数の星たちがかすかな衝突・爆発を繰り返して光を放ちながら細かい欠片になったりしているのをつぶさに目撃しているかのような気分になる。それから未生さんの紡ぎだすことばはなんだか理系、なんである。ビーカーやフラスコに入っている粉末状の薬品が硝子棒を伝って注がれる液体によって色が劇的に変わる熱を帯びて沸騰する、その化学反応の記録とかそんなイメジ。テンペラメトロノーム、アクリル絵具や子午線、リトマス試験紙、マリオネット、プリズム、なんていうささやかな「こまもの」好きには反応せざるを得ないことばが各所にちりばめられた詩たちは足穂的ワンダーに満ち満ちている。未生響の詩のなかで引き起こされることばたちの共鳴にふと歩みを止めてみようと思う、そこに刷られた文字を視てかの女のことば風に言えばわたしの中で空電が起きてしまったから。


今回の展示では、<アトリエ空中線>の全制作書籍約百二十点が一挙展覧されるとのことで、ファンとしては大へんに楽しみです!