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しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

memo murmur memo murmur


美しい装丁と洒脱なセンスで他の追随を許さない「日本のガリマール」(って今勝手に名付けた)こと、みすず書房の発行している、月刊『みすず』(http://www.msz.co.jp/book/magazine/)最新号no.568(2009年1・2月号)は「読書アンケート特集」。


みすずの本に親しむには、わたしはあまりに落ちこぼれているので、ふだん『みすず』なんて滅多に読むこともないのに、ふと、今日は出来ごころで図書館で手に取ってぱらぱら眺めていたら、敬愛する翻訳家であるところの藤本和子さんの選ぶ2008年読書の本たちが載っていたので、「おっ」と思い、読み進めると最後の最後に嬉しい驚きが待っていたのだった.....!

谷譲次著『テキサス無宿』、のびのびとした豊穣な文体。大胆な虚実の混在。英語の言葉を日本語に訳して、それにカタカナで英語のルビをふった箇所に強く興味を惹かれる。なぜなら、訳語は辞書にある意味の枠から大胆にはみだしていて、その結果、原語は緻密な、もっとも的確な訳語になっているからだ。翻訳とは何か。谷譲次こと、林不忘こと、牧逸馬こと、長谷川海太郎。かれの驚異的にして不可思議な才能。三十五歳でさっさと逝ってしまった。いったいどんな他界からやってきた人物だったのか。


やっぱり藤本和子さんが大好きだー!とすっかり嬉しくなる。


実は(って言う程のことでもないが)わたしは数年前に知人のご好意で幸運にもご本人にお会いしてお話しする機会があったのだけれど、天賦の才能とユウモアと天然*1とが彼女を素晴らしく魅力的な女性にしているのを目の当たりにし、その頃もうすでにブローティガンアメリカ文学からは遠く離れてしまってはいたけれど、それでも、彼女を前にして、頬は上気するし、声は上ずるしで、もうすっかりファン再熱という様相になってしまったのであった。


それにしても、谷譲次の名前が藤本和子さんの口から出て来るとは、何という喜びだろう、と、思わず忘れないようにメモした次第。

*1:手持ちの藤本さんの本『イリノイ遠景近景』に似顔絵入りのサインをしていただいたのだけれど、宛名がえーと、呼び捨てになっていた(笑)!