しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや


英パンの誕生日にロブ=グリエが亡くなった



さて、昨日(2月18日)は我が愛する岡田時彦の生誕105年にあたる日だったので、彼が映画雑誌に寄せた随筆や『春秋満保魯志草紙』の一節など読んで過ごす。はじめて見た時はおおいに感動したのだけれど、英パンの手書き文字はとても特徴のある字で妙にまるっこい。特に上手い字というのではないけれど、バランスの取れた、こなれた字という感じ。集めていたという舶来物の骨董のランプのいくつも吊り下げられている部屋で、縞の着物に角帯締めて正座して薄い唇に煙管をくわえその先に「HOPE」を燻らせながら、ああいうまるっこい字でさらさらと『新青年』や『文藝倶楽部』などに文章を書き送っていたのだなあ、と手書き文字をじっと見つめてしみじみ想像する。



今朝、新聞を見たら、アラン・ロブ=グリエの死亡記事が出ていた。昔、ちゃんと小説読みだった頃、後藤明生に震撼している時期があったので、難しい顔して読むのが好きだったな、ヌーヴォー・ロマン。色々集めて結局そのまま未読になってしまっている本*1が今でも本棚にたくさん入っている....一体、いつ読むのだろう?『反復』は出版を心待ちにしていたのに、カヴァがどうも気に入らなくて結局今日の今日まで読まずに来てしまった。もうヌーヴォー・ロマンなんて小難しいのは一生読まない(読めない)かも....。その中で、繰り返し読んだ数少ない本の一冊が、ロブ=グリエの『新しい小説のために』(訳=平岡篤頼、新潮社、1967年)でこれは一時期小説書きのお手本にしようと思って付箋を貼りながら読んでいた。



今頃は、クロード・シモン平岡篤頼先生と一緒に酒盛りなぞしているところでしょうか。

*1:クロード・シモン『三枚つづりの絵』、フィリップ・ソレルス『公園』、クロード・オリエ『治安維持』、ナタリー・サロート『見知らぬ男の肖像』など