しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

土曜日、シネマヴェーラのモーニングショーにて清水宏風の中の子供』(1937年)。


小津安二郎『淑女は何を忘れたか』にて「とんがらかっちゃ駄目よ」コンビの葉山正雄と突貫小僧が出ている!のだけれど、この映画では何と言っても三平役の爆弾小僧が大そう可愛らしく素晴らしい。個人的に少年が活躍している映画には昔から弱く、半ズボン履いてチャンバラや追っかけっこや飛んだり跳ねたりを見るだけで、ほとんど批評不可というか、目頭が熱くなってしまうのだけれど、そんなひいき目を差し置いても素晴らしかったと思う。ロケや移動撮影の清々しさ、本当に画面からさわやかな風が吹いてくるような映画。清水宏、いいなあ、好きだなあ。これは小津の『お早よう』やジャン・ヴィゴ『新学期 操行ゼロ』やゲルハルト・ランプレヒト『少年探偵団』と共に語られるべき子供映画の傑作だと思う。



小津安二郎が好きなので何かと引いてしまうけれど、『お早よう』にて実(設楽幸嗣)と勇(島津雅彦)兄弟の近所の少年(ゼンちゃんだったかな?)が "This is a cat, Is this a cat? No, it it not a cat. This is a cat"と大声で英語の教科書を読み上げながら母親(高橋とよ)に勉強していると油断させておいて大泉滉の家にさっさとテレヴィを観に出かけてしまう、というシーン。『風の中の子供』で三平(爆弾小僧)が大声で国語の教科書を音読しながら「三平ちゃんは丙ばっかりじゃないの、少しは勉強しなさい」という母親役の吉川満子を安心させておきながら、次のシーンではとっとと駆け出して走りながら得意の「ターザン」の雄叫びで近所の子供たちを召集するというところが、何となくその『お早よう』のシーンにそっくりで、小津はもしかしたらこのシーンからヒントを得て作ったのかなあと思う。