しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

土曜日、昼、フィルムセンターにて清水宏『有りがたうさん』(1936年)、それから国立近代美術館でアンリ・カルティエ=ブレッソンの写真展を観る。ロビーに飯沢耕太郎が居た。『有りがたうさん』は倫理に貫かれた瑞々しいロードムーヴィ、じんわりと泣ける。こういう作品を道徳の時間に鑑賞させれば子供はよい子に育つんじゃないか知ら。桑野通子がきっぷの良い姐さん風で素晴らしい。街道工事に従事する朝鮮人の娘の悲哀を描いたところなどはっとする。ブレッソンジャン・ルノワール『ピクニック』『ゲームの規則』の助監督だったなんて知らなかった!ちょい役で出演しているのもはじめて知って感激。マティスだのボナールだのレオノール・フィニだのマンディアルグだのジャコメッティだののポートレートが素敵。マティスはやっぱり品の良さが違うなあ。ブレッソンが撮る写真は30年代の作品と60年代の作品とが隣り合わせに並んでいてもまったく違和感がない。


日曜日、昼、フィルムセンターにて川島雄三『貸間あり』(1959年)『暖簾』(1958年)と続けて二本観る。『貸間あり』は最高(但し、猫好きとしては猫が佃煮になってしまうのだけがいただけない)『暖簾』も素晴らしい、森繁や山田五十鈴中村鴈治郎浪花千栄子、俳優が皆上手すぎるもんなあ。川島雄三の喜劇はほんとにスピーディーで俳優もよく動くし脚本も何とも上手くて思わず笑ってしまうのだけれど、何処か映画から滲み出るうら寂しい印象が否めないのは彼が青森の出身だからかなと勝手に思うのだけれど。太宰治寺山修司川島雄三の三人を研究してみたらきっと共通点がいくつもあるような気がする。ニヒリストでひねくれてて自ら進んで「道化」を演じてしまうような...。