しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや


土曜日は、午後から図書館に籠りッ切りで『コレクション・モダン都市文化』(ゆまに書房)の棚にある分を片っ端から持ってきて、ひたすら眺めて過ごす。何しろ物凄いヴォリュームなのでなかなか読み進まない。第1巻の『銀座のモダニズム』*1 に収録されている、福田勝治の写真集『銀座』(装丁・河野鷹思!)での、森田たまに依る随筆からして素晴らしくて、わくわくと読む。尾張町の角(今のビアホール・ライオンの場所)にあった、カフェ・ライオン、そのライオンに勤めていたお夏さんが独立して開いた、バー・ルパン、パリ帰りの洋画家・松山省三が銀座に開いたはじめてのカフェで、小山内薫が名付けたカフェ・プランタン、日本で最初に本格的ブラジルコーヒーを飲ませる喫茶店となった、カフェ・パウリスタ、お店に熱帯魚が居たという、千疋屋フルーツパーラー、当時の銀座の華やかな活況が手に取るように伝わってくるのが何とも嬉しい。


それから、第13巻『グルメ案内記』*2の巻末に掲載されている近藤裕子さんの「モダン都市のグルメ案内記」がこれまた歓声を挙げてしまう程に素晴らしい「おお!」と唸ってしまう論文でしっかりコピーする。尾崎翠の『こほろぎ嬢』の、わたしも大好きな一節「でも、あまり度々パン!パン!パン!て騒ぎたかないんです」を引いているのが嬉しいだけではなく、霞を吸って生きたいと願っている嬢が、それでも一個の肉体を持った人間として生きるためには「やはりパンが要る」のだけれども、それは取り敢えずの空腹さえ満たしてくれれば良いという食パンではなく、「チョコレエトのあんこ」のついた、「余剰」の食べ物としての、ねじパンだということに注目している彼女の考察はとても鋭い。


日が暮れはじめるまで、4時間半粘ってみたけれど、どうにも喉がからからになり、後ろ髪引かれるまま今回の閲覧はお仕舞い。紙が良いので非常にずっしりと重い『第16巻 モダンガール』*3 のみ、何とか借りてよろよろと表に出る。