一雨来たあとだからなのか、アスファルトから立ち上る水蒸気と土の混じり合った匂いとともに、どこからともなく沈丁花の強い香りが、いくつも襞のついた鬱陶しいマスクを通してもなお、鼻孔をくすぐってくれるのが、少し、嬉しい。沈丁花の唄で思い出すのは、金延幸子『み空』*1に入っている『春一番の風は激しく』。
匂いいずる
ちんちょうげの花に
よいしれる
町通りのさま
目ざめさなびき
朝もや
日をあびて 時をまてず
ああ 春一番の風は 激しく
見上げいずる
もくれんの花に
ちりそめし
白波のさま
飛び立ちいさり
さける色
舞もうて ちょうになりぬ
ああ 春一番の風は 激しく
ああ.....