しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

ニャーンズ・コレクション


今日もたいへんによいお天気なので、いそいそと洗濯2回と掃除をしてお昼前にジュンク堂周遊へ。この前の大江健三郎書店の知性ど真ん中な素晴らしく美しいとしか言いようがない書棚にも唸ったけれど(そしてこれらの本をすいすい読める頭が欲しいと思った!ヴェイユとか!あ、でも個人的に百合子さんの著作と金井美恵子『恋愛太平記』がひっそりと棚にあってにんまり)今開催中の赤瀬川原平書店もはてさてどんな本に出会えるやらと気になっていたのだ。へんな隙間な本(だって、金属機械のコーナーとかあるし)や、「やっぱりね」的な荒俣宏とか宮武外骨とかいろいろ愉しいことになっていたのだけれど、金井美恵子『スクラップ・ギャラリー』にも載っていたゾンネンシュターンの画集があって「おお!」と思ったのと、それから、デルヴォーもあったっけ、あと、『熊谷守一の猫』や筑摩から出ている百間先生の集成は平積みにわーっと並んでいてこちらもにやにやと嬉しい。百合子さんや花さんの本もあった。この二人はいつも人気者なのだなあ。それで、いろいろおもしろそうな本がたくさんあったのだけれど、何と言っても一番心惹かれたのはこの本!


赤瀬川原平『ニャーンズ・コレクション』

画家、作家、美術評論家、様々な顔を持つ稀代の文人、赤瀬川原平氏が、路上観察老人力研究に続いて発表する“知的サークル活動”最新版。 氏の脳内に設立された空想美術館、『マタタビ美術館』が所蔵する泰西猫名画“ニャーンズ・コレクション”の傑作を一挙公開する、世界に類を見ない美術画集です。 ルネサンスの画家から、ブリューゲルゴヤまで。そして、ルノワールゴーギャンなど印象派の大家から、シャガールピカソ、フジタなど20世紀を代表する人気画家まで、錚々たる画家たちが描いたとっておきの猫名画と、マタタビ美術館館長・赤瀬川原平氏のユーモアに満ちたエッセイで構成する、空想美術館・公式図録。 猫好き、美術愛好家、原平ファン、三者必読の一冊です。“ニャーンズ・コレクション”収蔵作品・作家名(一部)伊太利亜国 ギルランダイオ君 メッシーナ君西班牙国 ゴヤ君 ミロ君 ピカソ仏蘭西ルノアール君 マネ君 ロートレック君 ルソー君 ゴーギャン君 阿蘭陀国 ボッス君 ブリューゲル君日本国 藤田嗣治熊谷守一

これはおもしろいなあ!
"Barnes"と"Nearnes"、綴りまでそっくり真似してるって可笑しすぎ。


下におりて、ちくま文庫復刊の谷崎潤一郎『美食倶楽部』*1を買う。種村季弘も解説で書いてたけれど、わたしももちろん大谷崎の素晴らしい作品群も好きだけれど、『美食倶楽部』のような小谷崎の作品もとても素敵だと思う。はじめて読んだとき*2はスティーヴンソン『自殺クラブ』を思い出したけれど(ってそれは「クラブ」つながりだけなのでは....まあいいや)、ひたすら美食に没頭する怪しい秘密結社のような紳士たちの集いが克明に描写されていて、ぞくぞくするほど素晴らしいのです、ちょっと変態入っている*3のでこっそりとだけれど、熱烈に好きな小説。

*1:isbn:4480023291

*2:どこで読んだのだろう?と思って、棚を見たら、北宋社の素晴らしいアンソロジー、武田百合子監修『物食う女』に収録されていたのだった。

*3:暗闇のなかで若い女の柔らかな指が口腔に押し込まれたり、唾液を唇に塗りたくったりするのがだんだん支那料理の火腿の味(!)になったりするのです。