しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

そのあと、急いで地下鉄に乗ってポポタムに駆け込みで海野弘「私の100冊の本の旅」展。海野弘先生の本が一同に展示されているのは壮観。ダメもとで「あのう、今日のトークショーは満席ですか?」とお店の方にお聞きしたら、「受付は一番最後で桟敷席になりますがそれでもよろしければ」とのこと。始まる時間にもう一度お店に行くともうすっかりトークが始まっていた。

・海野先生が憧れていたのは山口昌男植草甚一植草甚一は新宿の紀伊国屋でよく見かけたそう。そうっと後ろでちょろちょろしていて、植草甚一と同じ本を棚から掴んで買ったりした。それでそのまま上の喫茶店に行くと、植草甚一本人が居て、「君、いい本買ったね」と言われたりしたのだそう(!)。


・学生時代は露文だったのでロシア・アヴァンギャルドについて調べようと思っていたら、いつの間にかその前の世紀末やアール・ヌーヴォーでひっかかってしまったので、ロシア・アヴァンギャルドは後回しになってしまった。


・20年代の都市を描いた映画で観るべきはやはりフリッツ・ラングメトロポリス』、ムルナウ、ディートリッヒの初期作品などドイツのもの。(ムルナウとはおっしゃっていなかったけれど勝手にそう思った)あとは日本だったら衣笠貞之助の一部の作品。(わー観なきゃ!)日本の20年代は欧米より遅れていたので、30年代前半までを含めて20年代的なものを探すとおもしろい。女性の洋装も30年代に入ってようやく一般化したので。(確かに、新興芸術派のモダン小説は30年代前半が多いもの、と思った。我が偏愛の谷譲次も20年代後半から30年代にかけてだし。)


・海野先生の数々の著作の中でも『モダン都市東京』は素晴らしい、と岡崎さん。5,6冊は持っているらしい。(ええー、一冊わけてほしい。わたしも探しているけれど未だ手に入れていません。勤務先の図書館もなぜか欠本になっていて読めないし。)というか、海野先生の著作100冊のうち、手持ちが70冊以上って!すごいなあ。


満州のハルピンに行ったらまだアール・ヌーヴォー建築や、その後のモダン建築がまだ残っていた。甘粕正彦など軍関係が使用していた建物らしい。その後、何故か毛沢東記念館になっていた場所。海野先生が地元の人に建築について説明してあげたとのこと。それまで地元の人々はどういう建築かなんて知らなかったのだそう。


などなどおもしろい話満載でした。海野先生は小柄で、終始にこやかで、人当たりのよい優しそうな方。もっと細かそうというか、神経質そうというか、美的感覚にすぐれている人特有の、みだりに人を寄せ付けないオーラがある方なのかなと思っていたので嬉しい意外。滅多にない機会ですもの、こうして駆け込みだったけど無事にお話が聞けてよかった。


あ、でもお二人とも『団○パンチ』の編集者、赤田さんの名前をせっせと「赤木さん、赤木さん」と言っていたので心のなかで「違うよ、赤田さんだよ!」と思っていた。関係者の人とか誰か言わないのかなあと思っていたのに誰も言わなかったんだよなー。