しっぷ・あほうい!

或る日のライブラリアンが綴るあれやこれや

cinema

ジョゼフ・コーネル『フラッシング・メドウズ』

フィルムセンターにて、ジョゼフ・コーネルの短編映画『フラッシング・メドウズ』(8分/16mm/1965年)を観たので、忘れないうちに映像の記憶を書かねば、と思いつつも、こんなにあいだがあいてしまった。記憶が薄らいでしまう前に、走り書きしておいたメモを…

1983年のジョゼフ・コーネル映画祭

京橋のフィルムセンター図書室には、あらゆる映画資料を収集対象としているだけあって、こんなもの(リーフレット)まで所蔵されているのである。すごい(!)。1983年のその場に立ち会えなかった者として、せめて記録だけでもここに書きとめておきます。 1.…

増村保造『最高殊勲夫人』は、戦前の日活映画『結婚二重奏』へのオマージュである

関東でも梅雨明けが発表された午後、フィルムセンターにて、増村保造『最高殊勲夫人』(大映東京、1959年)を観た。若尾文子が可愛いテンポの良いロマンティックコメディの佳作といった感じで楽しめたけれど、いちばん感動したのは、母親役に戦前の日活スタ…

蜘蛛の巣

井口奈己『ニシノユキヒコの恋と冒険』はほんとうに素晴らしすぎて、久しぶりに新作映画を観て昂奮する。あまりによかったのでトークイベントにまでいそいそと参加して、井口監督に直接「ほんっとに素晴らしかったです!」と伝えられたのが嬉しかった。おお…

ホセ・ルイス・ゲリン『影の列車』を観る イメージフォーラムにて開催中の「ホセ・ルイス・ゲリン映画祭」より、『影の列車』(1997年)を観た。1930年11月8日の薄明の時刻、 ル・テュイ湖畔で一人のアマチュア映画愛好家が消息を絶つ。あとには、彼の行方不…

オリヴェイラ『アニキ・ボボ』(1942年)は瑞々しい傑作だった フィルムセンターにて、マノエル・ド・オリヴェイラ『アニキ・ボボ』(1942年)を観る。『ドウロ河』(今回は来ないんだわ残念)『カニバイシュ』と並んで、長いあいだ観る日を待ち望んでいた一本…

今日のうちに記しておきたい ポレポレ東中野にて本日より岡田茉莉子の特集上映がはじまった。今日は2008年にフィルムセンターでかかったマキノ雅弘特集上映で都合で見逃していた『やくざ囃子』を観る。鶴田浩二が陽気に歌を唄いながら軽やかに人を斬ってゆく…

牛原虚彦のピカピカのモダニズム! フィルムセンターの特集「生誕百年・映画女優 田中絹代」にて、未見だった岡田時彦の出演映画を無事に鑑賞できてほっとしています。以下、観た順に感想をメモ。 ・島津保次郎『愛よ人類と共にあれ』(1931年、松竹蒲田) …

フィルムセンターにて上映中だった『生誕百年 映画監督山中貞雄』が終わったのでメモ。 山中貞雄が学生時代に使用していた辞書の左隅の小さな余白に「パラパラ漫画」は描かれていた。おお!馬が川を越えて走って行く、ピクトグラムのような人が刀を交えてそ…

九月十七日は山中貞雄の命日なので、フィルムセンターで開催中の「生誕百年 映画監督山中貞雄」(http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2009-9/kaisetsu.html)にて『海鳴り街道』(1936年、日活京都)『大菩薩峠 甲源一刀流の巻』(1935年、日活京都)を観る…

神保町シアターにて、成瀬巳喜男『晩菊』(1954年、東宝)をようやく観ることができた。素晴らしかった......!今まで観た成瀬作品はせいぜい二十本くらいだけれど、これはもしかすると『流れる』と並ぶマイ・ベストかも.....。杉村春子先生や沢村貞子が上手…

鈴木卓爾 『私は猫ストーカー』 あんな謎な客層の映画ははじめて、というくらい老若男女入り乱れ、おまけに子供までいた。文化系若人で溢れ返っていると思っていたのに意外。まもなく客席の大部分を占めるその手の方々はひたすら猫目当てに来ているのだとい…

映画覚え書き:ボリス・バルネット『青い青い海』(1935年) 水曜日、アテネ・フランセにて、ずっと長いあいだ見逃し続けていたボリス・バルネット『青い青い海』(1935年)をようやく観る。洗練から遠く離れた『ジュールとジム』もしくは『冒険者たち』ある…

週末つれづれ記: 先週の新文芸座での小津安二郎特集では、無事に岡田時彦主演の映画を二本鑑賞することができ、ほっとしているところ。改めて見直してみると『淑女と髯』(1931年)は傾向映画すれすれの危なっかしさ(字幕や脚本には無いものの髭面のマルク…

映画メモ:小津安二郎のモダニズム 新文芸座で小津安二郎特集がはじまっているというのに、雑務に追われてなかなか行けなかったのを、これだけは!と休みを取って観に行く。小津作品はしょっちゅう何処かで上映されているけれど、サイレント時代の作品は『生…

京阪神遊覧日記その三:大雄寺へ山中貞雄のお墓参りにゆく 阪急電車に揺られて京都へゆく。京都、ああ、ご無沙汰の京都....!こんなに好きな土地なのに三年振りである。京都の地に降り立つだけで嬉しくてそわそわ、三条のホテルにさっさと荷物を預けて、いざ…

京阪神遊覧日記その二:「けれども三昧」ー待兼山で『大大阪観光』(1937年)を観る 二日目は駆け足での大阪観光であった。阪急宝塚線に乗って、大阪大学総合学術博物館にて開催中の《昭和12年のモダン都市へ 観光映画「大大阪観光」の世界》を観に行く。成…

忙しい.....とぼやきつつも、神保町シアターにて、島耕二『東京のヒロイン』(新東宝、1950年)を観る。 今回のフィルムは、短縮版というかなり不完全なもので、お世辞にも画質がよいとは言えない代物であった。とは言え、監督の島耕二は、何しろ俳優時代に…

映画メモ:共栄堂で黒いカレーを食べてから、神保町シアターにて、溝口健二『武蔵野夫人』(1951年、東宝)を観た。実はまだ観ていなかった溝口作品の一本。「原作:大岡昇平 潤色:福田恆存 脚本:依田義賢」「撮影:玉井正夫」とか錚々たる名前がクレジッ…

2008年にスクリーンで見た映画ベスト10+3をメモ(鑑賞順)。来年も良い映画にたくさん出逢えますように! ・牛原虚彦『海浜の女王』(1927年、松竹蒲田)*1無声映画鑑賞会にて。パッツン前髪がルイーズ・ブルックスそっくりの「伝説のモダンガール」こと柏…

見たことを忘れないうちに映画メモ。 この忙しいのに、そして体調もイマイチなのに、新文芸座に『限りなき前進』『人情紙風船』という豪華二本立てなので、これだけは、と、いそいそと観に行く。 小津安二郎が原作「愉しき哉保吉君」を書き(と、いうか野上…

と、久々の更新がお知らせだけじゃ何なので......。 本日12月11日は1908年生まれのマノエル・ド・オリヴェイラ、100回目のお誕生日!ワオ!マキノ雅弘と同い年(←正確には早生まれだから違うけど)で、2008年現在に存命しているだけでも凄いのに、しかも現役…

雁来紅の赤と山中貞雄 加藤泰『映画監督 山中貞雄』*1を読んでいたら、『キネマ旬報』(1939年(昭和14年)9月11日号)に掲載された小津安二郎による山中貞雄の追悼文「雁来紅の記」が引用されており、それを読んではっとする。 山中に召集令状が来たのは暑…

その前の日の土曜日、東京国立近代美術館フィルムセンター(http://www.momat.go.jp/FC/fc.html)にて、伊藤大輔『お六櫛』(第一映画、1935年)を観た。これはたぶん伊藤大輔の作品としては凡作に入る映画だろうと思っていたけれど、月田一郎と山田五十鈴が…

マキノ祭りだった京都映画祭(冨田美香先生のお話,聞きたかった!)にも行けず、フィルムセンター「大河内伝次郎と伊藤大輔」特集の『忠次旅日記』は風邪による体調不良で見逃し、あのビクトル・エリセが推薦した(!)というホセ・ルイス・ゲリン『シルビ…

最高に粋な粋な映画:エルンスト・ルビッチ『天国は待ってくれる』 エルンスト・ルビッチの遺作とも言うべき晩年の作品『天国は待ってくれる』(1943年)を観る、素晴らしかった!あいにくスクリーンでという訳ではなく、家の小さなブラウン管を通して観たの…

ふたたび、ハンマースホイのこと ハンマースホイは線の画家だ。 「私にモチーフを選ばせるもの、それは線です。それを私は絵画における建築的成分として名付けるつもりです。そして、もちろん光も重要です。ただし明らかに、私にとってきわめて重要な意味を…

映画メモ 岸松雄『私の映画史』(池田書店、1955年) 山中貞雄を発見した映画批評家として有名な岸松雄の自叙伝に後半「愚問愚答」と題されて『キネマ旬報』に連載された監督対談が付け加えられている楽しい本。1906年(明治三十九年)生まれのこの著者の自…

15日、有楽町朝日ホールにて、「フランス映画の秘宝」(http://www.asahi.com/event/fr/)。クロード・シャブロル『肉屋』Claude Chabrol "Le Boucher"(1969)、サッシャ・ギトリ『あなたの目になりたい』Sacha Guitry "Donne-moi tes yeux"(1943)を観る。 描…

デトレフ・ジールク(ダグラス・サーク)『思ひ出の曲』(1936年、ウーファ)!! 愛らしすぎて、幸福すぎて、一体全体こんな夢見るように幸せな映画が存在していいのでしょうか?と思ってしまうくらい、素晴らしくすてきな映画。そして、この感じは、そうだ…

映画メモ: 海の日、ぴあフィルムフェスティバルにて、ダグラス・サーク『翼に賭ける命』(1957年)『天が許し給うすべて』(1955年)の二本を観た。 ウィリアム・フォークナー『パイロン』が原作の『翼に賭ける命』は素晴らしかった。imdbのレヴューによる…

映画メモ: 土曜日、神保町シアターにて五所平之助『新道[前後篇]』(松竹大船、1936年)を観る。通俗小説の大御所・菊池寛原作で、佐分利信・上原謙・佐野周二の二代目松竹三羽烏が出演しているメロドラマ、主演は田中絹代と川崎弘子。五所福之助による美…

成瀬巳喜男『鶴八鶴次郎』(1938年、東宝) 今までフィルムで観る機会が幾度となくあったにもかかわらず、どうも予定が合わずに見逃し続けてきた作品をようやくフィルムセンターにて観る。東宝だから「監督 成瀬巳喜男」じゃなくて「演出・脚色 成瀬巳喜男」…

金曜日、アテネフランセにて成瀬巳喜男『君と別れて』『夜ごとの夢』(松竹蒲田、1933年)を観る。 『君と別れて』については、2月の金井美恵子+井口奈己トークショーの時にもその名前があがっていて(id:el-sur:20080201)いつかきっと観たいナアと思って…

水曜日、東京国立近代美術館フィルムセンター「発掘された映画たち2008」(http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2008-05/kaisetsu.html)のバン・コレクションのうちの一本を見に行く。 田坂具隆『月よりの使者』(新興キネマ、1934年)*1 入江たか子の…

佐々木康の映画を見て清水宏のことばかり思い出す 佐々木康『悲恋華』(松竹蒲田、1936年) 原作が谷譲次の家庭小説執筆時のペンネーム牧逸馬で、好きな女優さんの一人であるところの桑野通子が出ているというのでいそいそと観にいった久しぶりの東京国立近…

ジャン・ルノワール『フレンチ・カンカン』(1954年)をはじめて観たのは、もう何年も何年も前のことで、その頃はまだ有楽町の駅前には「レバンテ」だって「ももや」(ああ、ホウ・シャオシェンの『珈琲時光』!)だってあったし、郊外のショッピングモール…

東京国立近代美術館フィルムセンターにて、ジャン・ルノワール『のらくら兵』(Tire au Flanc, 1928)。 先月一杯までの、特集上映「生誕百年 映画監督 マキノ雅広」*1に引き続き、個人的に感涙もののルノワール特集だてんで、さっそく今日から通い始めるつ…

猫と木漏れ日とふたりの女の子と/ジャック・リヴェット『セリーヌとジュリーは舟でゆく』 本日期末の有給休暇。午前中、東京駅近くで用事を済ませてから、中央線で御茶ノ水まで出て、そこから総武線に乗って飯田橋駅で下車。御茶ノ水駅から四ッ谷駅までの総…

日仏学院で開催中の「ジャック・リヴェット・レトロスペクティヴ」(http://www.institut.jp/agenda/festival.php?fest_id=40)にて、ジャック・リヴェット『パリはわれらのもの』(Paris nous appartient, 1960)。行く前から家人に「これ日本未公開だから1…

映画メモ: ジャン・ルノワール『素晴しき放浪者』(1932年)を観て『お早よう』(1959年)の勇ちゃんを思い出す そう、あの水と水と光のきらめきとが溢れ返っている眩いほどに美しい、ジャン・ヴィゴ『アタラント号』(1934年)での、落書きみたいなおかし…

竹中労を読んでバンツマとアラカンとマキノ正博に敬意を表して 東京国立近代美術館フィルムセンターにて、マキノ正博『恋山彦』(日活、1937年)『江戸の悪太郎』(日活、1939年)を観た。阪東妻三郎の荒唐無稽すぎる超人っぷりが笑えた、さすが「大将、おア…

今日もまた東京国立近代美術館フィルムセンターにて、マキノ正博『グランド・ショウ1946年』(松竹大船、1946年)マキノ雅弘『おかる勘平』(東宝、1952年)を観る。『おかる勘平』を今回の特集でどうしても観たくて、このプログラムは平日夕方しかかからな…

日曜日、東京国立近代美術館フィルムセンターにて、川浪良太・滝澤英輔・久保為義『学生三代記 昭和時代[マキノ・グラフ版]』(マキノプロ、1930年)の中から「野球の巻」「下宿の巻」を観た。これはずいぶんと前から映画保存協会(http://www.filmpres.org/…

とある方のご好意で、念願かなって、小津安二郎監督作品『お嬢さん』(昭和五年、松竹蒲田)の主題歌(!)、二村定一・天野喜久代『お嬢さんの唄』(昭和六年、時雨音羽作詩/佐々紅華作曲)を聴かせていただく。何という幸運なことだろうか。本当にありが…

強風の吹きすさぶ土曜日、東京国立近代美術館フィルムセンター(http://www.momat.go.jp/fc.html)にて、マキノ雅弘『浮雲日記』(東宝、1952年)『離婚』(新東宝、1952年)を観る。 『浮雲日記』 主人公の重光彰の喋り方を見ていて何故か早稲田の斎藤佑樹…

映画メモ: 神保町シアターにて、市川崑『穴』『プーサン』を観た。『穴』(1957年)はほとんど京マチ子の独り舞台であった。山村聡はシリアスな役どころの時(『山の音』『舞姫』『女優須磨子の恋』など)はあまり好きではないが、こういうコメディに出ると…

市川崑を観て溝口健二のことばかり思い出す 土曜日、神保町シアターに市川崑を観に行く。 市川崑『日本橋』(1956年、大映) 本当はサイレント時代の溝口健二『日本橋』(1929年)が観たいけれど、それが叶わないので、せめて市川崑の『日本橋』でもいいから…

市川崑監督が亡くなられたのですね、九十二歳。オリヴェイラよりまだ七歳も若いのに....。亡くなる前の日に、偶然にふとした出来心で、山根貞男が『季刊 リュミエール』に書いていた「最後の加藤泰」という文章を読んでいて、加藤泰もキネカ大森にて特集上映…

金曜日にアテネフランセで数年振りに成瀬巳喜男『流れる』を観て、翌土曜日にBunkamuraル・シネマでジャン・ルノワール『恋多き女』"Elena et les hommes"を観ることができるという、2008年東京の贅沢!今気付いたけれど、どちらも1956年の作品だった。 ジャ…